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【エンジンの知識】図示熱効率向上するには?ポンプ損失を解説①

サイエンス

『【エンジンの知識】理論熱効率って何?~圧縮比・比熱比とは?~』に続き、今回は図示熱効率向上のためのアプローチがテーマです。

アプローチはたくさんありますが、今回はその中でもポンプ損失改善のアプローチに関して解説していきたいと思います。

まず図示熱効率のおさらいからしていきましょう!

図示熱効率とは?

図示熱効率とは下図の通り、4ストロークエンジンのサイクル(オットーサイクル)からなるPV線図(P:圧力、V:容積)の図形の中の面積を指します。

PV線図
引用:火花点火機関における圧縮自着火の物理的・化学的過程がノックの生起におよぼす影響(著:松浦勝也 殿)

図示熱効率は分解すると、理論熱効率と様々な損失に分解されます。図示熱効率を上げるためには理論熱効率を上げるか、損失を下げるか、になります。

熱効率

その損失の中の『ポンプ損失』に関して解説していきます。

ポンプ損失とは?

ポンプ損失とは何か?

そもそも内燃機関は、ポンプのように空気を吸入って、排気ガスを排出します。これはピストンが作動ガスに対する仕事であり、排気側圧力が吸気側圧力より高ければ負の仕事となり、損失となります。この損失をポンピングロスと言います。

と言っても難しいので、簡単にイメージを表すと以下の通り注射器と同じなのです。

注射器を模擬している下の図をご覧ください。

注射器

パターン①の場合、口が細いため、水を押し出そうとすると少し抵抗を感じるはずです。そしてその分水が出る勢いが強くなります。

パターン②の場合、口が太いので、水を出す際に抵抗を感じません。そのため、水はチョロチョロでて勢いは弱いです。

このような現象はホースや水道の蛇口でも同じ現象になり、多くの方が一度は遊びついでに経験したことがあるのではないでしょうか。

このパターン①のような”抵抗”が『ポンプ損失』と呼ばれます。

ポンプ損失ってエンジンのどこで発生する?

ポンプ損失がガソリンエンジン上のどこで初発生するかは主に以下の個所になります。

スロットルバルブ(ディーゼルエンジンの場合は無)

吸排気バルブ

図解で説明すると以下の通りです。

スロットルバルブ

空気は矢印の通りに吸入され、排出されます。吸入される際に、まず抵抗になるのが『スロットルバルブ』です。スロットルバルブは、シリンダー内に入る空気量を調整し、エンジンの出力を調整しています。

ポンプ損失_図解_スロットル開度小

このスロットルバルブは、私たちが運転するときに踏んでいるアクセルペダルと連携していて、アクセルを少し踏めばスロットルは少し開く。高速道路みたいに、アクセルをたくさん踏めばスロットルがたくさん開きます。(下図参照)

ポンプ損失_図解_スロットル全開

前の項目で注射器の説明をしましたが、それと同じでスロットルが少ししか開かないと、抵抗になってしまい空気はシリンダーに入りにくくなってしまいます。

まずここが損失ポイントです。

吸排気バルブ

次は『吸排気バルブ』です。

こちらも空気が入る際にバルブが開くのですが、バルブが開く面積はアクセル等とは関係なく一定です。そのため損失も一定となります。そのため、エンジン開発者はできるだけこの部分が抵抗にならないようにバルブの形を設計しているのです。

①吸気

ポンプ損失を改善するには?

ポンプ損失は『スロットルバルブ』と『吸排気バルブ』が抵抗になることで生じます。

なので抵抗にならないような策が改善策になります。

具体的な策としては以下の通りです。

A:排気再循環(EGR:Exhaust Gas Reserculation)

B:希薄燃焼(リーンバーン)
C:可変動弁機構➡次回解説
D:気筒休止➡次回解説

排気再循環(EGR)

排気再循環(以後EGRと呼ぶ)は、エンジン爆発後の燃焼ガスをもう一度シリンダーに吸吸い込もう!というシステムです。

普通のエンジンは下図の通り、排気ガスはそのまま排気管から排出されます。

ポンプ損失_図解_スロットル開度小

EGRの装置を付ける場合、排気管から分岐のパイプを通し、吸気経路につなげます。(下図参照)

なお、この際にEGRを吸気経路につなげる先はスロットルバルブの手前です。

ポンプ損失_EGR

EGRは排気ガスになるので、酸素分子(O2)は完全燃焼して水(H2O)や二酸化炭素(CO2)となっています。スロットルバルブの手前に酸素がない排気ガスを通すと、『普通の空気+酸素がない排気ガス』がシリンダーに入っていくことになります。

吸入空気に酸素が足りないと爆発のエネルギーが小さくなってしまうため、もっとたくさん空気(酸素)を取り込むにスロットルの開度は大きく開くのです。

結果、スロットルが開くのでポンプ損失が改善されるというわけです。

リーンバーン

そもそもリーンバーン(希薄燃焼)とはどういうことか?

燃焼力学の世界では、空気と燃料は14.7:1の割合で混ざり合うことが理論的にいいとされており、これを理論空燃比という。

この比率より、空気が多くなると燃料が薄くなるので、『リーンバーン(希薄燃焼)』といい、逆に燃料が14.7:1より多くなると『リッチバーン』という。

リーンバーンの場合、たくさん空気(酸素)を取り込みたいため、スロットルバルブを絞らずに空気を送り込む必要がある。そのため抵抗が減るので損失も減るというわけである。

ここまでが今回の記事のご説明となります。

次回『可変動弁機構』と『気筒休止』に関してご説明していきます。

以上、ありがとうございました<m(__)m>

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