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【燃費向上にはEGRが不可欠】理論熱効率向上や冷却損失を低減する仕組みとは?

サイエンス

こんにちは、だいです。

環境問題が叫ばれるようになり、燃費向上が不可欠となっている昨今、多くの自動車メーカーが燃費向上に向けた開発を行っています。

その燃費向上に必要不可欠なのがEGRという技術です。
今回はEGRについて解説していきます。

燃費向上に必要不可欠な理由とは?

まず結論です。
燃費向上に必要不可欠な理由には以下の点が挙げられます。

◆熱効率向上に寄与するため
①理論熱効率向上
②ポンプ損失低減
③冷却損失低減
④未燃損失低減

大きな理由は熱効率向上への寄与です。
それでは個々について解説していきましょう。

そもそもEGRとは?

EGRとはExhaust・Gas・Reserculation(排気再循環)の略で、燃焼室から出た排気ガスの一部を再度燃焼室に戻すことを指します。

図解は以下の通りです。
ポンプ損失_EGR
排気管からEGR導入のパイプをスロットル前につなぎ、EGRガスを燃焼室に入れます。
重要なのが排気圧>吸気圧でないとEGRを導入できないことです。
空気は圧力の低いほうに向かって流れるため、吸気圧が高いと排気ガスが流れていきません。
吸気圧が高くなるケースとしては以下。
・エンジン回転数が高い時
・スロットル開度が大きい高負荷の時
このような際にはEGRを導入できないため、熱効率つまり燃費が良くならないのです。

各自動車メーカーはEGRを導入できる、中負荷・中回転域で採用していますが、今後はどれだけ高回転・高負荷で導入できるかが燃費向上の差になってくるでしょう。

理論熱効率向上

最初にお話しした、理論熱効率向上についてお話しします。
理論熱効率とは、次のような図で表されます。

熱効率

さらに、理論熱効率は次の通り圧縮比と比熱比から成る式で表されます
理論熱効率

EGRはこの比熱に影響するのです。
比熱とは物質を温度変化させるために必要な熱量を指しますが、その必要な熱量は他原子分子(H2O、CO2等)のほうが大きくなります。
EGRは排気ガスなので完全燃焼後の他原子分子が多く含まれるため、比熱比を小さくし、理論熱効率を向上させるのです。

ポンプ損失の低減

最初にお話しした、EGRがポンプ損失低減につながる理由について解説します。

※ポンプ損失自体に関しては過去に記事を書いておりますので、詳細はこちらを参照ください。
[blogcard url="https://www.rough-ni-ikou.com/enjine-pumploss/"]

ポンプ損失が発生する場所は主に下記の場所です。
・スロットルバルブ
・吸排気バルブ

その中でもスロットルバルブのポンプ損失が支配的であり、EGRの導入はこの部分のポンプ損失低減を低減します。

スロットルバルブは燃焼室に入る空気量(酸素量)を調整します。
EGRは排気ガスなので酸素が含まれていません。そのEGRを導入することでスロットルバルブ自体は酸素が足りないと判定し、スロットルの開度を大きくします。それにより抵抗が減るのでポンプ損失が低減するのです。

冷却損失の低減

冷却損失とは、大雑把に言うと熱が外に逃げ出してしまうことを言います。

エンジンは燃焼室で爆発し、その際2000℃を超える熱を発生させます。
しかし、その熱の多くはシリンダー壁面、バルブ、ピストンなどから逃げ出していきます。

そのため冷却損失を下げる手段は次の2点。
①断熱して熱を逃がさない
②燃焼温度を下げ、逃げていく熱を減らす

①は燃焼室壁面や周辺部品に断熱コーティングをする必要があり、コストアップになるため量産エンジンには到底できない技術です。
その点、②はEGR導入により達成できるため各社取り組んでいるのです。

燃焼温度を下げ、逃げていく熱を減らす

EGR導入で燃焼温度を下げられる理由は”熱容量”にあります。
熱容量とは空間の温度を1K上げるために必要なエネルギーを指し、単位は[J/K]となります。

例えばガソリンの燃焼は化学式で以下になります。
C8H18+12.5O2=9H2O+8CO2

EGRが多い状態では以下のとおり。
C8H18+12.5O2+CO2+H2O=9H2O+8CO2+CO2+H2O

EGRが多いと燃焼する際に存在する分子が多くなり、化学反応に必要なエネルギーが増えるため、発生する熱量が減るのです。そのため燃焼温度が下がるという仕組みです。

燃焼温度が高いとノッキングにも影響します。
ノッキングを避けるため、各社は可変動弁を使い点火タイミングを遅角させますが、遅角させると出力が落ちるため商品性に影響してくるのです。

EGRは燃費を向上させるだけでなく、出力向上も図れる技術というわけです。

未燃損失の低減

未燃損失低減とは、完全燃焼できず燃料が余ってしまう損失のことを言います。

未燃損失が大きくなるケースは次の二点です。
①高負荷でノッキングを回避したい時
②高回転側で材料の耐力を確保したい時

高負荷でノッキングを回避したい時

ノッキングは燃焼室内の未燃ガスが起点となり、自着火する現象のことを言います。
これは中回転~高回転の高負荷側で見られる現象となり、燃焼室内の温度が高いのも要因の一つです。
回避策としては、次の3点です。
①可変動弁により燃焼室内の圧力を下げる
②点火タイミングを遅角させ圧力を下げる
③燃料リッチで燃焼温度を下げ、圧力を下げる

③は燃料を多く噴くため、完全燃焼できず未燃損失が増加します。
そこでEGRを導入することにより、燃焼温度を下げられるため、未燃損失を低減できるのです。

高回転側で材料の耐力を確保したい時

材料というのは温度が高くなるほど、強度が弱くなっていきます。
排気温度は最高で1000℃程度になり、エンジン部品たちにとっては過酷な状態となるのです。
そのため温度が高くなるような高回転側では燃料を多く噴き、温度を下げています。

解決策は前項と同じでEGR導入により、燃焼温度を下げることです。
ただしかし、最初にお話しした通り、高回転側では吸気圧>排気圧となるためEGRを導入しにくいのが実情です。
この解決策に解をもたせ、高回転側の燃費向上につなげる必要がありそうです。

以上がEGRに関する解説でした。
EGRや各損失などは以下のような雑誌にも取り上げられておりますので参考にしてみてください。

以上、ありがとうございました。

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