エンジン知識

ボアスト比・S/B比とは何?|実は燃費や出力に重要!エンジンの基礎知識を紹介!

ボアスト

こんにちは、だいです!
現在某自動車メーカーでエンジン開発に携わっています。
そんな私が“ボアスト・S/B比”について紹介したいと思います。

この記事を読むとあなたは以下のことがわかるようになります。

  1. ボアスト比とは何か?
  2. ボアスト比は何に影響するのか?
  3. 現行車のボアスト比はどのくらい?

それでは詳細に入りましょう。

ボアスト比・S/B比とは何か?

シリンダーの内径とピストンの移動距離の比

“ボアスト比”とは“ボア”“ストローク”の比ことをいい、それぞれ以下のことを指します。
図も併せて参照ください。

  • ボア=シリンダー内径
  • ストローク=ピストンの移動距離

ボアスト
※引用:https://clicccar.com/2019/03/06/696873/

話し言葉では“ボアスト比”と使うことが多いですが、論文やカタログ等で指標とされるのは“ストローク・ボア比”もしくは“S/B比”の方が一般的です。

また、ストロークをボアで割った値に対し“1”となるもの、またはそうでないものを以下のような呼び方をします。

  • S/B比=1→スクエア
  • S/B比<1→ショートストローク
  • S/B比>1→ロングストローク

ショートストロークのメリット・デメリット

メリット・デメリットは主に以下の通りです。

✓メリット

  • エンジンを高回転化できる
  • エンジンをコンパクトにできる

✓デメリット

  • 燃焼室が扁平になり冷却損失増大し燃費悪化
  • 燃焼速度が低下による遅れ損失増大で燃費悪化

ロングストロークのメリット・デメリット

メリット・デメリットは主に以下の通りです。

✓メリット

  • 低回転側がトルクフルになる
  • S/V比が小さくなり冷却損失低下による燃費良化
  • 初期燃焼速度増加による遅れ損失低減

✓デメリット

  • 高回転化が難しい
  • ストローク方向にエンジンが大きくなる

ボアスト比は何に影響するのか?

燃費=熱効率への影響

前項でボアスト比ごとのメリット・デメリットでも記載しましたが、燃費=熱効率に影響します。

熱効率は以下のような構成となっています。
この中の冷却損失と遅れ損失に大きく効いてくるのです。

熱効率

✓冷却損失
ボアスト比が小さくなると、燃焼室の体積に対する表面積の割合=S/V比(Surface /Volume)というものが大きくなります
S/V比が大きい=表面積が大きいと、熱が逃げる面積がえます
上死点付近は一番温度が高くなる部分で、そこから熱がたくさん逃げると損失が大きくなるというロジックです。

そのため燃費=熱効率向上に有利なのは、ロングストロークのエンジンと言われているのです。

✓遅れ損失
ボアスト比が小さくなると燃焼室が扁平化(うすい形)になります。
燃焼室が薄くなると、初期燃焼速度(着火~10%質量燃焼点)に影響します。
圧縮混合空気にスパークプラグで放電すると、火炎が形成され徐々に大きくなります。
しかし、燃焼室が扁平形状だと火炎が成長してすぐピストン壁面に干渉します。
火炎が壁面に干渉すると熱が奪われ火炎の成長スピードが遅くなり、初期燃焼速度が遅れ、等容度が小さくなってしまうというロジックです。

そのため、遅れ損失面でも燃費=熱効率向上に有利なのは、ロングストロークのエンジンと言われているのです。

トルク・出力への影響

まずトルク出力について簡単に記載します。
トルクとは、クランクを回転させるために必要な力と考えてください。
また出力はその力=トルクに時間(回転数)を掛けたものになります。
つまり『出力=トルク×回転数』となります。

上記でご説明した通り、トルク=クランクを回転させるための力であり、クランク半径×ピストンを押す力がそれに値します。
クランク半径はストロークに比例するため、ロングストロークであるほどクランク半径が大きくなり、トルクが大きくなるのです。

ただロングストロークになると、ピストンスピードが高くなり高回転側がきつくなります。そのため『出力=トルク×回転数』であることから、ロングストロークエンジンの出力は小さくなります。

低回転側のトルク重視ロングストローク
高回転側の出力重視ショートストローク

エンジンサイズへの影響

ボアスト比を大きくすると、エンジンをストローク方向に大きくしなければなりません。
そのため直列・V型エンジンであればボンネットの高さ制約が厳しくなり、水平対向エンジンであれば車の横幅制約が厳しくなってきます。

今後の燃費規制を考慮するとロングストローク化が望ましいですが、自動車開発の制約上ボアスト比は1.2~1.3程度が限界となってくるのでしょうか。

現行車のボアスト比はどのくらい?

それでは各自動車メーカーのエンジンのボアスト比を見てみましょう。

◆トヨタ

車種 エンジン Br St S/B
RAV4 M25A 87.5 103.4 1.18
スープラ B58 83.0 94.6 1.14

◆ホンダ

車種 エンジン Br St S/B
FIT LEB-H5 73.0 89.4 1.22
CIVIC TYPE-R K20C 86.0 85.9 1.00

◆日産

車種 エンジン Br St S/B
キックス HR12DE 78 83.6 1.07
GT-R VR38DETT 95.5 88.4 0.93

◆マツダ

車種 エンジン Br St S/B
MAZDA3 HF-VPH 83.5 91.2 1.09
CX-5 PY-RPS 89.0 100 1.12

◆SUBARU

車種 エンジン Br St S/B
WRXSTI FA20 92.0 75.0 0.82
レヴォーグ CB18 80.6 88.0 1.09

やはり燃費が優れる車はS/B比が1.1以上で、スポーツタイプの車はS/Bが1以下となることが見てわかると思います。

さいごに

冒頭に示した以下の部分は理解できましたでしょうか?

  1. ボアスト比とは何か?
  2. ボアスト比は何に影響するのか?
  3. 現行車のボアスト比はどのくらい?

ぜひまだイマイチという方は再度読んでみてください。

またエンジンについては以下のような雑誌にも詳しく掲載されていますので参考にしてみてください。

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