今回は熱効率に関してご説明していきたいと思います。
トヨタのホームページのエンジンの項目には『熱効率40%達成!』なんて書かれていたりしますが、ご覧になったことがある方はいますでしょうか?
おそらくエンジンに興味のある方でない限りは、あまり見ない項目かもしれませんね。。
実はその熱効率40%とは凄い値なのです!100%の内の僅か40%ではありますが凄いことで、トヨタのエンジン(TNGA)はガソリンエンジンの中では熱効率40%で世界トップクラスなのです!
ではその熱効率について、簡単にご説明していきたいと思います。
熱効率とは?
熱効率とは、難しく表現すると、『熱として投入されたエネルギーの内、機械的な仕事や電気的な仕事に変換される割合のこと』を指します。
少し具体的に言うと、『いつもガソリンスタンドで入れるガソリンが、エンジンの中で爆発し、爆発したエネルギーが、タイヤに伝達されて、地面を走る』までの一連の流れの中で、どれだけロスがなく効率的に走れているか、ということを指しているのです。
実際、エンジンで爆発させたエネルギーの内およそ60%~70%が、熱や摩擦などの損失というものでロスしてしまって、『走る』という動作まで伝わりきれていないのです。
それらをイメージした表が以下になります。
爆発して得られたエネルギーの内、タイヤまで伝達できるのはおよそ30%~40%で、残りは4つの損失で捨てられてしまうのです。
そもそもエンジンの爆発って何?
ガソリンエンジンは以下のような4つの工程(4ストローク)でガソリンを燃やし、エネルギーを得ています。この4つの工程というのは現在の一般的なガソリン熱機関のサイクルであり、バイクなどでは2ストロークと呼ばれる機関もあれば、マツダでは昔ロータリーエンジンと呼ばれる、また違うサイクルのエンジンがありました。
4サイクルに関してご説明していきます。
①吸気工程
まずは吸気工程です。
外の空気がエンジン内部を通って、燃焼室の中に入ってきます。
その際、吸気バルブが開きますが、ここが抵抗になっていてポンプ損失が発生します。注射器も口がすぼまっているため、吸う時とか押すときとか抵抗を感じますよね?それがポンプ損失です。
吸入された空気が燃焼室の中で渦を巻きます。この渦を巻く現象をタンブル流といいます。トヨタのTNGAエンジンはとてもタンブルの渦の流れが強く、これが熱効率向上につながっているのです。
②圧縮工程
次に圧縮工程です。
燃焼室に空気が入った後、吸気バルブが閉じられ密閉空間となります。
ピストンが上昇して行き、だんだん空気が圧縮され、燃焼室内の圧力が高まって温度が上がります。
そしてピストンがMAXまで上昇した点(上死点)付近で点火プラグから火花が出て、燃料が混ざった圧縮空気が着火します。
一気に燃焼室内の圧力と温度は上昇し、ピストンを押し下げようとする力に変わります。
③膨張行程
次は膨張行程です。
爆発して得たエネルギーでピストンが押し下げられます。イメージでいうと自転車のペダルをこくような感じです。ペダルが一番上まで来たときに、足に力を入れてヨイショ!って漕ぐ、そんなイメージです。
この時、燃焼室&シリンダー室内の熱い空気の温度が、シリンダーの壁を伝って、ウォータージャケットと呼ばれる冷却水に伝熱されます。これが冷却損失です。
④排気工程
最後は排気工程です。
ピストンが一番下(下死点)まで下降したら、今度はその勢いでまたピストンが上昇します。そして排気バルブが開き、熱い空気が外に流れ出ていくのです。
これで4つの工程は終わり、また①吸気行程から繰り返されます。
この一連のサイクルが1分間に数千回というレベルで繰り返され、車はエネルギーを得て、走っているのです。
熱効率が良いメリットは?
熱効率が良い最大のメリットは燃費が良いことです。
効率が良いということは、損失が少ないので、ガソリンをより無駄なく使用できている=『燃費が良い』ということになります。
上の項目で説明した通り、エンジンのエネルギーは損失がほとんどなので、給油したガソリンをできるだけ効率的に使える高熱効率エンジンを、現在各自動車メーカーは開発しています。そして、熱効率はどの領域(回転数や負荷)でも同じというわけではありません。得意不得意の領域があるのです。
下図の回転数とエンジントルクで表されるグラフには各色の楕円を描いています。この楕円の中で赤い円が最も燃費が良い領域で、ここが熱効率がもっとも高い領域となります。各自動車メーカーはこの赤い円を大きく、そしてより高効率にしようとしています。
これから熱効率はどうなる?
各自動車メーカーは、熱効率を上げるために損失を減らすための技術開発を行っています。
もともとはパワーを上げるために使用されていたターボチャージャーやスーパーチャージャーなども、今では排気損失を改善するために用いられていたりするのです。
また、損失を改善するにも限度があるので、ハイブリッド自動車などのように車を電動化させて、エンジンの得意なところだけを使用し、苦手な領域は電気で運転できるようなシステム開発を行っています。
次回の記事では熱効率を上げるための手段についてご説明したいと思います。
以上、ありがとうございました<m(__)m>